公立中学校、私立での中高一貫校で英語教育に携わり、今は一般社団法人国際エデュテイメント協会にて勤務されて教育のアップデートをテーマに活動されている脇田さんにインタビューをしました。
教師として生徒に向き合っていた先生が、なぜ今は企業に? 脇田さんが教員を退職してまでアップデートしたかったこととは。
略歴
外国語大学 英米語学科 卒業
公立中学校で12年間勤務
公立中学校の在職中、通信制の大学院へ通い修士課程を修了
私立の中高一貫校へ転職し、2年間勤務
現在は国際エデュテイメント協会にて勤務
ーー今日はどうぞよろしくお願いします。脇田さんの教員時代のことを少し聞かせてください。
私は、大学を卒業して、12年間公立の中学校で英語の教師として勤務しました。
12年の中で本当にたくさんの仕事を行いました。
その中でも主に学力向上や組織づくりの研究主任の仕事に力を注ぎました。
その後私立の中高一貫校に転職して2年間主にICT教育について研究しました。
ーー現在は「教育のアップデート」をテーマにして活動されているとのことですが、脇田さんが考える「教育のアップデート」とはどういったことでしょうか?
私の教師生活14年間は本当に毎日大忙しで、英語教育、情報教育、キャリア教育、道徳教育、生徒指導、進路指導、担任業務、給食、掃除、研修、もちろん部活動もあり、大学生の頃に思い描いていた私が理想とする教師生活とはかけ離れていました。
業務以外の時間に多くの時間を割かざるを得ないことに、非常にモヤモヤを感じていました。
ですが、私学の中高一貫校では、私自身がICTプロジェクトリーダーとして、ICTを活用した業務改善に取り組みました。
その結果、自分の業務の時短はもちろん、生徒と向き合える時間を多く作れるようになり、教材研究をする時間も取れるようになりました。
ICT活用で教員の働き方を改革し、教育の水準を上げることで、教員の幸福度が上がる。
これが私の考える教育の一つのアップデートですかね。
ーー授業はどのようにアップデートするべきだとお考えですか?
私は「子供の好奇心を潰さない学習」をしたいと思っています。
何かに興味を持った時にそこに熱中できる環境を作ってあげたい。
けど現実は、多くは目の前の学習につまづいている、もしくはテストで点が取れたら良いということで学習で終わっている。
学習のゴールはそこではなく、生きていくためのスキルを身につけて欲しい。
理想は、知的好奇心をどんどん刺激する探究的な学びを通して、人間として必要なことを学んでいく。
例えば教科横断型の学習などで、プロジェクトとしてチーム単位で物事を進めていく。
その際にチーム内でコミュニケーションが発生する。
お互いの考え方や意見の違いがあったり、相乗効果が生まれる。
それって大人になって仕事をしたら絶対に必要なことですよね。
ーー今の学校では探究的な学習で一人一人の知的好奇心を育くむ教育というのは非現実的に思えるのですが、その辺りはいかがでしょうか?
確かに、なかなかそういう機会を与えてあげられていないのが現状です。教師は学習指導要領に従って授業を進めていきますが、「授業時間が足りない、探究なんてする余裕はない」と嘆いている先生も多いです。
ですが、私は、むしろ探究やPBLをカリキュラムの中心に据えることで学びをアップデートできると考えています。探究やPBLでの学びが教科の学習のフックになるようなイメージです。
ーーなるほど。他にはどのようなアップデートをお考えですか?
教科の学習に関して言えば、個別最適化を行うべきでしょうね。 現状、教師1人対生徒40人のクラスで、この生徒は良くできているからこういう学習を、この生徒は学習が遅れているからこういう学習を、というように個別最適化することは非常に困難です。
以前から個別最適化がなかなかできないことを非常にもどかしく思っていました。
しかし、私学では1人1台のICT機器を活用し、AIを使った学習を取り入れ、個別最適化した学習機会を提供することができました。
ICTツールを使用して生徒一人一人の学習状況を可視化する。どの単元でつまずいているのか、どこが得意なのか。
勉強が苦手な生徒に対しては、苦手な部分を克服できるようにコミュニケーションを取る。勉強が得意な生徒はそのレベルに合わせた問題を提供する。
同じものをやるのではなく、各々のレベルに合わせた難易度で全体の授業が進行していく。こういったことはICTを駆使すれば実現できます。これからこのような個別最適化学習は必須になってきます。
ーーそのようなICTのノウハウやスキルを持った教員はどれくらいいるのでしょう。
正直、現状ではそんなにたくさんいないと思います。ICT活用に対するマインドセットも、ICT機器の使用方法などもあまり普及していないと思います。
そもそもICT環境が整っていない学校もたくさんあります。
とは言うものの、GIGAスクール構想で1人1台のデバイスが導入されることになっています。もうすでに1人1台のデバイスが導入された自治体もちらほら出てきました。
デバイスはあるけど使えないとなると、まさに宝の持ち腐れですよね。
ーーそのような現状を改善するためにあえて教師を辞められたのでしょうか。
うですね。私が一つの学校に所属していても、その学校は変えられるかもしれないけど、日本全体を教育を変えることはできないですし。
企業に行きたかったのは、教育を動かすのは内部の力よりむしろ外部の力の方が大きいと感じていたからです。
インフラ等のハード面に関して今の私にはどうすることもできませんが、ソフト面であれば知識やノウハウを普及できる。
自治体や学校での研修講師として、もしくはブログやオンラインサロンで、ICT活用教育のノウハウを発信していくことで教育のアップデートに貢献できればと思っています。
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