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少し先の未来の学校〜新巽中学校〜

Written by: mocci ♯学校訪問シリーズ



 学校に入ると、どの子も元気に「こんにちはー!」と声をかけてくれる。

心から出てくる元気な挨拶、人懐こく話しかけてくれる生徒さんたち、授業中も活発に発言する姿が印象的な学校だ。


学校案内の対応をしてくれた山本先生に、すごくみんな楽しそうですね!というと、「5〜6年前はとても荒れている学校だったみたいですよ」とニッコリ。


新巽中学校のある生野区は商売の街で活気がある分、少し前までは地域としても学校としても様々な難しさを抱えていたという。しかし、今は大きく変わってきている。


山本 昌平                                                                                                               大阪市立新巽中学校教諭 | 教務主任・数学科バスケ部顧問、市中体連理事 長崎県出身。公立の教員として総合的な学習の時間を中心にPBLの実践を推進し、より良い学校づくりのためのICT活用をサポート。大阪市立中学校では初めて、1人1台端末環境を実現した。 Teacher2.0サロンメンバー。



子どもたちを主語の組織にしたかった


今でこそ、いろんな外部の人を繋いでくれるからと先生たちに頼りにされている山本先生だが、赴任当初から改革に着手した彼には問題定義もたくさんいたという。


新巽は、今からは想像もできないほどに荒れていた時期がある。先生への反抗や教師不信、話も聞いてもらえないようなこともしばしばだったらしい、そんな余韻が残る中、山本先生は赴任した。


一斉画一的な今までの学びの仕組みを根本から変えたい、一人に責任を負わせ、学校単位で課題を共有しない今の教育の仕組みには限界がある。


そこで、1人で問題を抱えるんじゃなくて「チーム」で解決できる組織を作るために動き始めた。管理職と共に仕組みの是正に着手し、おこなった改革は主にこの3本柱だ。


①授業を8:35から開始し、タテ持ち型編成、複数担任制を導入し、「すべての生徒を全教員で見守る」仕組み作り

②定期テストを廃止し、単元テストと実力テストにすることで、個のできる、できないをより明確に見える化

③PBL型学習を実践し、本校で定めたコンピテンシーを深め、生徒・教師双方向の“目指す生徒像”を確立




これらの改革の方針を打ち出す度に、先生方は共通の不安を持ったと思う。タテ持ち型編成、複数担任制にすることで、全学年の教科を見るということや、一つのクラスにかかりっきりになれないことなど、先生としての業務は運用が軌道にのるまで大きく膨らむことが想像されるからだ。


ただ、ここで大事なことは「業務が膨らむのは瞬間的なもの」ということ。これまで1人で抱えこんできたものを、みんなで乗り切れる基盤ができれば、視野も広がる、やりたいことも広がる、悩みは半分こになるのだから、取り組んでマイナスになることはない。


しかし、歴史あるこの業界では「新しいことに挑戦する」ということは、超えなければならない壁が沢山あるのだ。


「これまでそれで回ってきたのだから」、「他の中学校にいったらここでの経験は通用しなくなるから」何度もそう言われた。 何年かで基盤を作ってからやればいいじゃないとも言われた。目の前の子どもたちの今はこの瞬間しかないのに。

「子どもを主語にした議論をしましょう」方向性を見失いそうになったり、踏みとどまりそうな時、何度もこの言葉で立ち戻り、先生方と対話と実践を繰り返し進めてきた。



自分の教材を手放してから空気は変わった


「正直、はじめは大変でした」そう話してくれたのは、山本先生のサポートをしてきた英語の先生だ。


クラスにかかりっきりになれない分、一つのクラスに対して手薄になっているような気がしてしまったし、教材作りも大変だったと話す。


後輩が困ってても、わたしも初めは1人で頑張ったんだから、自分で考えてよって気持ちがどこかであって...でも、辛そうな後輩を見ていたら、これじゃ駄目だなって。改革が始まって2ヶ月目で自分の教材をオープンにしました。


「そうしたら、びっくりするくらいに上手くまわり始めたんです。まぁ今も大変なことはありますけど」と笑う先生。


知恵の出し合いをしなければ、乗り切れない状況だった。先生が自分の頑張って作ったきた「教材」を手放すのは想像以上に葛藤があると思う。「生徒のためになるなら」彼女の背中を最後に押したのはこの気持ちだ。


休校中もずっと繋がってましたよ


改革のもう一つの大きな柱は、プロジェクト型学習や問題解決型学習と呼ばれるPBL学習の取り組みだ。




山本先生が、授業だというのでついていくと、元気いっぱいに迎えてくれるみんな。指定の席に座って黙るのは開始1分だけ。あとは問いに対して活発にディスカッションを繰り返していく。


すると、授業中にもかかわらず、1人の学生さんが、質問に答えてくれると立候補して、こちらに駆けてきてくれた。なんとも頼もしい。


新巽の良いところ教えてくださいと聞くと、嬉しそうに話してくれた。


「プロジェクト型学習てわかりますか?わたしたちは中1から、その学習を通して様々な挑戦をすることができました。

地域の良さを伝える方法を考えたり、環境問題に関しても熱心に取り組むことができました。そうしているうちに、わたしたちに地域の企業からテーマソングを作ってほしいという依頼までくるようになって」


え?依頼?地域への活動を認められたんですね。そう伝えると、嬉そうに続けた。


「コロナの関係で休校中だったのですが、リモートでクラスのみんなで繋いで曲を作りました、もちろん1人一台端末環境を学校が用意してくれていたことも大きいですが、わたしたちは自分たちで今どうしたら良いか考えられることができるようになっていたから、休校中もずっと繋がっていましたよ!」


頭を金槌で殴られたような衝撃だった。


生徒さん自身から「休校中もずっと繋がってましたよ!」こんな言葉が聞けるなんて、それが新巽の全てじゃないか。


新巽の先生たちが、目指す学校がこの言葉で全部伝わった。


しんたつの理想の生徒像



このイラストは、山本先生が描いてくれたものだ。この一枚に想いを込めている。


「自分で自分の道を選択してほしい、そのために僕にできることはサポートしていくこと。教えるというより、一緒に学んでいく環境をつくれるかだと思います」


彼らの人生は彼らのものだ!可能性を広げたいという想いが伝わってくる。


どの生徒さんに聞いても、山本先生は話を聞いてくれます!とか、出張行ったり大変なのに、沢山の挑戦の機会を作ってくれるんです!とか、教えてくれるという言葉ではなくて、一緒に何かしてくれているお兄さんのような存在なのだ。


「本校の教職員と生徒たちの実践が、少し先の未来で共有できる財産となることを信じています」力強く最後まで話してくれた山本先生。

彼の人を巻き込む力も、この新巽中学校の魅力なのだと思った。大阪から、これからもどんどん色んな人を巻き込んでいってほしい。



〜mocciのおまけ〜

山本先生の目線の先には、カメラを構えるとガチガチになってしまう先生を、笑わすのに必死なスタッフがいます。




「山本先生には絶対言わないけど、すごく尊敬してます」


インタビューに答えてくれた生徒さんがこっそり教えてくれた。目を合わせて、最高だねって笑い合った。


この記事でばれちゃうかも、ごめんなさい。でも、先生もあなたや新巽のみんなを尊敬していたよって、わたしはここに残しておきたい。信頼し合える場所、安心できる場所、そんな学校を見ることができて嬉しかった。


また、新巽中学校のみんなに会いたい。


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