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執筆者の写真国際エデュテイメント協会

キャリア教育実践者が語る「キャリア」とは|Teacher2.0インタビュー後編

公立中学校で12年間、私立中高一貫校で2年間勤務。現在は教育関連の一般社団法人国際エデュテイメント協会にて勤務している脇田さん。教師として生徒に向き合っていた彼が、なぜ今は一般社団法人に転職したのか。キャリア教育を実践してきた脇田さんが考える「キャリア」とは何かをインタビューしました。


ーー教員から企業へ、脇田さんはいつからキャリアチェンジをしようと考えていたのですか?


私が教員になって9年目の時に、筑波でキャリア教育研修というものがありました。その時の内容はとても素晴らしく、これを子供たちにも提供してあげたいなと思ったんですね。「あなたはこういうことを将来やりたいんだよね。今のこの勉強は、あなたのやりたいと思っているこういう部分に活かせるよ。だから今はこういう力をつけて行こうね。」という具体的なことを伝えてあげたかったんです。しかし、なかなかうまく伝えられないこともありました。その時にふと、「あれ? 自分はどうなんだ?」って思ったんです。大学卒業後すぐ教師になって、ビジネスの世界を見てきていない、自分は世の中のことを何も知らないなと感じました。


そこから、外の世界と繋がろうとし始めました。海外で仕事をしている同級生やビジネスの現場でバリバリ活躍している同級生の話を聞いたりもしました。視野が広がれば広がるほど、自分のその状況を悔しく感じ始め、キャリア教育について学べば学ぶほど「自分がしたいことってなんだっけ?」と自問自答するようになり、考えれば考えるほど外の世界へ出たくなりました。


ーー公立学校からの転職活動はスムーズだったのでしょうか?


いや、正直全くダメでしたね。新任から数えて12年目の時、教師という職業ではなく、一般企業へ転職しようとしていました。しかし、結果的に公立学校から私立学校へ転職しました。


一般企業の面接を数社受けに行きましたが、断られるんです。未経験の状態からスタートするので覚悟していましたが、その断られ方が経験などの理由ではなく、「公務員のままの方が良いよ」「転職しない方が良いんじゃない?」「そのまま先生でいた方が良いよ」という言葉ばかりでした。


ーー英語力という強みは通じなかったのでしょうか?


英語力を活かしたいという思いはもちろんありました。英検1級があれば雇ってもらえるんじゃないかと淡く期待していた部分もあります。京都の観光地をガイドするタクシー運転手の面接にも行きました。英語使いながら観光案内ができる仕事って、今まで自分がやってきたことが活かせるんじゃないかと。ただ、その時の面接官からも「転職なんてやめておきなさい」と言われました。(笑)


ーー塾など他の教育関連企業は考えられましたか?


塾の面接にも行きましたが、その時の面接官からも「公務員の方がいいと思いますよ」と説得されました。教育公務員からの転職は難しいと聞いていましたが、痛感しました。同時に、もう少し柔軟に教員が転職できるシステムがないと、教育の風通しがよくならないとも思いました。


ーー結果として私立の学校に転職されたのですね。私学に転職してよかったことはありますか?


転職を模索する中で、私学の教員採用合同説明会があり、そこで出会った学校に転職することになりました。


私学に勤務して良かったなって思うことは、教科書会社やコンテンツプロバイダー、塾など、外部との繋がりがたくさんできたことですね。2年間で名刺の束がだいたい8センチくらい、500〜600枚あたりの名刺交換をしていました。ICTプロジェクトリーダーを任されたということもあって、外部の研修にたくさん参加させていただき、日本全国にコネクションを築けたことも大変ありがたかったと思っています。Google Japanの本社にも研修でお邪魔して、Googleの働き方などにもインスパイアされました。私学での2年間では、ICTの知識やスキルも身に付けることができましたし、授業観・教育観が大きくアップデートされました。




そして私学は「教育+ビジネス」なので、教育以外にもビジネスマインドを身に付けられたことが良かったです。入試広報の仕事はまさにマーケティングビジネスでしたし、経営や経済についても学ぶことができました。転職の目的だった「キャリア」について新たな視点を身に付けることができて良かったと思っています。


ーー現在は会社員として勤務をされていますが、学校との違いは何でしょうか。


今はほとんど在宅勤務ですが、楽しいですし、新鮮です。今はコミュニケーションツールとしてSlackを使っていますが、会議も連絡もSlack。基本的に在宅でも仕事が完結する。そういった環境にすごく新鮮さを感じています。これを学校現場に置き換えて、何をオフラインで、何をオンラインでやるのか、業務内容の分解、再構築を考えていきたいですね。


また、今は特定の業務に絞って仕事をし、生産性を高めていますが、教員は1人で何職種もの仕事をこなしています。教員には授業のスペシャリストとしての仕事に専念できる仕組みを構築して欲しいなと思います。教師がやらなくてもいい仕事はテクノロジーで代替えするとか、アウトソーシングするとかできればいいなと思います。


ーー様々な経験をされてきて、新任の頃の自分に「キャリア」についてアドバイスをするなら、どんな言葉をかけてあげたいですか?


まずは、そんなにメンタルを潰すまで頑張らなくて良いよって言ってあげたいですね。当時は本当に様々なストレスを抱えながら仕事をしていました。


私は、教師はスペシャリストの仕事だと思っています。しかし実際は広範囲に業務をこなすジェネラリストです。全部を完璧にしないといけないと思っていましたが、今は、授業が得意な先生は授業で力を発揮する、事務作業が得意な先生はそこで力を発揮する、得意な部分を活かし苦手な部分は補い合う、そういった働き方をすることが、子供達としっかり向き合う、本来のスペシャリストとしての仕事を行うことにつながると思います。1つでも良いから、自信を持てる得意なことを見つけて欲しいと思います。自分がやりたいことができるようになるのが一番です。




もう1つ、これは自分の経験から強く思うことですが、定期的に色んな方と繋がる機会を持つことです。教師以外の仕事や世界を知ることで、教員として使える経験や知識が身に付く。それは子供たちへ還元できることもたくさんあります。もちろんその時間自体を作ることが難しくて、繋がりがなくなっていくんですが。それでも私は色んな方と繋がったことで自分の世界を広くすることができました。いざ何かあった時でも対応ができました。自分の得意なことを見つけること、色んな方と繋がること。繋がりが人生を豊かにしてくれます。




ーー最後に、脇田さんの今後の「キャリア」について教えてください。


「教育のアップデート」が私の使命だと考えています。自治体や学校へコンサルティングや研修を行っていきたいですし、ブログ等でのノウハウの発信も行っていきたいです。まずは先生向けのコミュニティを作り、その中で教育について考える機会を設け、教育観をアップデートできればと考えています。1人では、なかなかアップデートできませんが、他者との繋がりを持つことで、世界観が変わっていく。ぜひたくさんの人が関わり合い、良いコミュニティを作れたらと思っています。


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